
豊臣家滅亡の時代を背景に、浪人・後藤又兵衛の誇りと孤独、そして人間味を描いた異色の時代劇です。
発表
発表日:1954年8月
出版:おもしろブック 集英社
あらすじ
時は江戸初期。豊臣家が滅亡の危機に瀕する中、かつての名将・後藤又兵衛は浪人として各地を流浪していた。仕官の話が持ち上がるたびに「高禄でなければ受けぬ」と突っぱねるその姿は、世間から「強欲な男」として悪評を買っていた。
しかし、徳川方の若き武士・森勝重は、又兵衛の真意に興味を抱き、密かにその行動を追う。やがて明らかになるのは、又兵衛がただの欲深い浪人ではなく、かつての主君・豊臣家への忠義と、武士としての誇りを捨てきれない男であるという事実だった。
やがて大坂の陣が勃発。又兵衛は豊臣方として大坂城に入城し、浪人たちの中で自然と人望を集めていく。戦場ではその剛勇を発揮し、敵軍を相手に奮戦するが、数に勝る徳川軍の前に次第に追い詰められていく。
激戦の中、勝重は又兵衛と刃を交えるが、敗北を喫する。だが又兵衛は勝重の命を奪うことなく、「これからは徳川の時代。長く生きよ」と言い残し、その場を去っていった。
その後、勝重は又兵衛が討ち死にしたとの噂を何度も耳にし、再会を諦めていた。だがあくる日、ふとした場所で、息も絶え絶えの又兵衛と再び出会う。勝重は彼を生かすため、「秀頼はまだ生きている」と語りかける。
その言葉を胸に、又兵衛はよろよろと立ち上がり、もやの中へと消えていった――。
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| 手塚治虫文庫全集 弁慶 | 講談社 | 2011年3月11日 | 367ページ | 文庫 |