
リスの少年ジロと少女サナエの交流を軸に、自然と人間、そして科学の共存を描いた、ファンタジックな少女漫画です。
「なかよし」創刊号から連載された。「なかよし」は「ぼくら」と共に講談社が年少者向き漫画誌の先鞭をつけたもので、B5版漫画誌の申し子だった。ダムに沈む山林をテーマにした珍しい作品。
(手塚治虫の40年展 キャプションより)
発表
発表日:1955年1月 – 1956年3月
出版:なかよし 講談社
あらすじ
リスのジロは、とんから谷に住むまき毛一族の末っ子。リスたちの王を決める戦いで父・まき毛が敗れ、一家は谷を追われることになる。逃亡の途中、ジロは激流にのまれて川へ流され、家族とはぐれてしまう。
流れ着いた先で心優しい少女・サナエと、その家の使用人の息子・ごん太に助けられる。しかしその直後、ジロを狙っていたトンビが襲いかかり、サナエはジロをかばって目に重傷を負ってしまう。それでもサナエたちは、傷ついたジロを連れて東京へ戻るのだった。
ジロはサナエの家で猫のムクや犬のウドと仲良くなり、父の仇を討つために強くなろうと決意。ドブネズミとの戦いを経て、予知能力を得たジロは地震の夢を見るが、人間たちには警告が届かず、東京は大地震に襲われる。サナエの両親は亡くなり、彼女はごん太の故郷・とんから村へ向かうことになる。
汽車での移動中、ジロはネズミと間違われて外へ放り出され、サナエたちは彼を探すために汽車を降りるが、乗り遅れてしまう。さらにサナエは人さらいに騙されて別の汽車に乗せられ、逃げるために川へ飛び降りる。その川は、かつてジロがキツネと落ちた川だった。
川をさかのぼりながら、ジロの家族の消息を知った一行は、再びとんから谷へ向かう。ジロは父を殺した三角と対決するが、卑怯な手に敗れてしまう。三角はまき毛一族の根絶を命じるが、そこに銃声が響き、動物たちは逃げまどう。
やがてサナエは目の治療を受けて回復し、とんから谷に戻るが、そこにはダム建設の計画が持ち上がっていた。皮肉にもその計画は、亡き父が進めていたものだった。サナエは苦悩しながらも、アイデア料を受け取り、動物たちを助ける方法を模索する。
やがて、とんから谷はダムの底に沈むが、サナエとジロたちは新たな希望を胸に、未来へと歩み出す。
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| 手塚治虫文庫全集 ナスビ女王 | 講談社 | 2011年9月9日 | 430ページ | 文庫 |