ピストルをあたまにのせた人びと


引用:少年画報 1952年11月号ふろく 少年画報社

幕末の動乱期を舞台に、発明好きな少年が夢と希望を胸に異国を目指す、冒険とユーモアに満ちた時代ファンタジーです。

「ピストルをあたまにのせた人びと」というタイトルは、つまり、外国人から見たチョンマゲのことです。この物語の骨子は、ゴンチャロフというロシア人の「パルラダ号航海記」の中の日本訪問のくだりで、外国人、それもはじめて日本人を見た人たちの印象記としてはきわめておもしろく、示唆に富んでいて、変わった幕末ものになるだろうと感じたのです。
しかし、この発明好きの小僧を主人公にした物語は、それとは別に、かなり以前からつくってあったのです。はっきりいえば、昭和二十五年の「漫画大学」の三つめのエピソードに使うつもりでかきおろしたものが、「漫画大学」のトリの話には少し地味すぎるということでボツにしていたものです。その原稿の一部はまだ残っているはずですが、ぼくとしては、かなり異色の時代ものとして気に入っていた作品です。
当時は、まだ「赤銅鈴之助」がはじまるかなりまえで、現代もの漫画は暴力的なものが多いといって、敬遠されていた時期です。
だから、外国人――駐留軍――が見た日本人と日本の姿を客観的にかくことが、現代の皮肉につうじると思ったのです。
(手塚治虫漫画全集「丹下左膳」より)

発表

発表日:1952年9月
出版:少年画報 付録 少年画報社

あらすじ

時は幕末。異国・ロメリア国の黒船「ドラゴン号」が日本に来航し、攘夷派の怒りが高まる中、江戸の町に住む発明少年・栗助(くりすけ)は、商家で働きながらも学問と発明に情熱を燃やしていた。
栗助は、空を飛ぶ乗り物や傷薬などを自作するほどの才気を持ち、周囲の妨害にもめげずに学び続けていた。そんなある日、彼はロメリアの船に乗って異国へ渡り、もっと自由に学問を究めたいという夢を抱くようになる。
しかし、攘夷派の暴動や、外国人排斥の空気が強まる中、栗助の行動は周囲の大人たちから危険視され、やがて大きな騒動に巻き込まれていく。果たして栗助は、自らの夢を貫き、未知の世界へと旅立つことができるのか――。

収録されてる出版物

タイトル出版社発行年ページ数判型
手塚治虫文庫全集 弁慶講談社2011年3月11日367ページ文庫

登場キャラクター