
戦で敵を討った武士が、その家族との交流を通して戦争のむなしさに気づいていく、哀しくも温かい時代劇短編です。
「夏草物語」は、「ジャングル大帝」がおわったばかりの『漫画少年』(学童社)に、息ぬきとしてかいた作品です。この翌月から「火の鳥」の連載をはじめたのです。当時、「聖衣」でスタートしたシネマスコープがたいへん話題をよんでいたので、ちゃんとその構図をとりいれたりしています。
(手塚治虫漫画全集「夜明け城」より)
発表
発表日:1954年6月
出版:漫画少年 学童社
あらすじ
戦国の世、武士・久奴木楢丸(くぬぎならまる)は、激しい戦の末に敵方の豪傑・榎の兵衛を討ち取る。榎の兵衛は死の間際、妻子のことを案じて命乞いをするが、楢丸はそれを振り切って斬ってしまう。加増を約束していた殿様は報酬をうやむやにし、楢丸は後悔と虚しさを抱えながら榎の兵衛の家族のもとを訪れる。
楢丸は、自分が榎の兵衛を討ったことを伏せたまま、妻と息子・兵馬に戦死の報を伝える。やがて彼らと心を通わせ、家族のような関係を築いていくが、ある日兵馬は楢丸こそ父の仇であることを知ってしまう。怒りに燃える兵馬は楢丸から剣術を学び、仇討ちを誓う。
時が流れ、兵馬は立派な武士へと成長する。ふるさとが再び戦の舞台となったとき、兵馬は味方の兵に家を焼かれ、母と楢丸が巻き込まれる。楢丸は傷を負いながらも兵馬に「仇である自分を討て」と語るが、兵馬は「悪いのは戦そのものだ」と気づき、剣を収める。
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| 手塚治虫文庫全集 弁慶 | 講談社 | 2011年3月11日 | 367ページ | 文庫 |