
読者からの好評を受けて、集英社が第二部の制作を企画した作品です。
林不忘による原作小説では、まず「乾雲坤竜(けんうんこんりゅう)の巻」が描かれ、ここで丹下左膳という異形の剣士がいかにして誕生したかが語られます。このエピソードが高く評価されたことから、後に独立した物語として「こけ猿の壺の巻」が執筆されました。
ところが、集英社の漫画版では順序が逆となり、先に「こけ猿の壺の巻」が描かれてしまったため、本来前日譚である「乾雲坤竜の巻」が続編として扱われることになりました。
まったく遺憾なことに、巻頭の二色八ページをかきあげたところで、ぼくは当時大流行した中国かぜ(俗称)にかかって、高熱を出してしまいました。
当時、ぼくの下宿先だった雑司が谷の並木ハウスというアパートの、二階の部屋でベッドにひっくりかえって、フーフーいっているかたわらに「おもしろブック」の担当記者が絶望的な顔をしてすわっていた光景はよくおぼえています。
「代筆――それも、ネームから一切、でしょうね。」
「しかたありませんな。残念だが……どうせ代筆をたのむんなら、一冊めで手伝ってもらった永島慎二さんにお願いしてくださいよ……。」
やむをえず、またもや永島さんが呼ばれ、それに鈴木光明さんが加わりました。
したがって、「丹下左膳第二部」は、ぼくの作品ではないのです。しいていえば、表紙と二色分だけがぼくの作品です。
(手塚治虫漫画全集「丹下左膳」より)
発表
発表日:1955年3月
出版:おもしろブック 付録 集英社
収録されてる出版物
単行本化されてません。