丹下左膳


『丹下左膳』作品概要へ

引用:おもしろブック 1954年12月号ふろく 集英社

百万両の黄金のありかを巡る争奪戦を軸に、孤児と剣士の奇妙な絆と、痛快なチャンバラ劇が繰り広げられる娯楽時代劇です。

林不忘の原作小説『丹下左膳・こけ猿の壺』をベースに、手塚治虫が少年向けにアレンジしたものです。

この企画を出したのは、たぶん、当時ずっとぼくの担当だった「おもしろブック」編集部の長野規さんです。彼とは、「ピピちゃん」からずっと長いつきあいですが、早大出身の実存主義者で、かつロマンチストです。この人の伝記をかくとものすごくおもしろくなりそうですが、集英社の重役となり、あの「少年ジャンプ」の生みの親なのだということだけ記しておきます。
ひきうけたけれど、さて困った。あの原作の化け物じみたマスクのイメージを、どうやって手塚流に改良するかです。
左膳は右目がひたいから頬骨にかけて、はげしく裂けています。ブラック・ジャックなんでものではないのです。現在では、むしろ劇画として個性的なのでしょうが、当時、グロテスクな漫画はすぐにPTAや児童図書関係からつるし上げられていた時代です。それに、ぼくといっしょに集英社の別冊付録を手がけていた馬場のぼる氏の漫画の風格というか、風情がぼっくは大好きだったのです。左膳の顔を馬場のぼる風にかいたらどうなるだろう、という思案でできあがったのが、あのキャラクターなのです。
(手塚治虫漫画全集「丹下左膳」より)

発表

発表日:1954年12月
出版:おもしろブック 付録 集英社

あらすじ

江戸時代、柳生家に伝わる「こけ猿の壺」には、百万両の黄金の隠し場所が記されていた。ある日、その壺がひょんなことから孤児の少年・チョビ安の手に渡る。壺の存在を知った悪党たちは、黄金を狙ってチョビ安に襲いかかるが、そこに現れたのが、隻眼隻腕の剣士・丹下左膳だった。
左膳は、粗野で無頼な風貌ながらも、チョビ安を守り、次第に父親代わりのような存在となっていく。一方、伊賀柳生の若侍・源三郎は、婿入り先の道場で陰謀に巻き込まれ、命を狙われる。彼の窮地を救ったのもまた、左膳だった。
やがて、左膳と源三郎は、黄金を巡る陰謀の渦中に巻き込まれていく。追う者、奪う者、守る者が入り乱れる中、左膳と仲間たちは、江戸の街を舞台に痛快な戦いを繰り広げる。そして、古寺の地下に隠された地図が見つかったとき、物語はクライマックスへと突き進む。

収録されてる出版物

タイトル出版社発行年ページ数判型
手塚治虫文庫全集 弁慶講談社2011年3月11日367ページ文庫

登場キャラクター