はりきり弁慶(弁慶)


引用:手塚治虫文庫全集 弁慶 講談社[弁慶]

源義経に仕える豪快な僧・弁慶の生涯を、ユーモアと大胆な構成で描いた歴史時代劇です。忠義と人間味あふれるキャラクターが魅力の中編作品です。

雑誌界に別冊ふろくブームがおこったとき、「おもしろブック」は少年雑誌の王者らしく、雑誌の倍ほどもある読みごたえのあるものをつけて、評判を呼びました。そのひとつが。この「弁慶」です。
じつは、この歴史上の怪人物については、ほんのちょっぴりの、芝居でみた限り以外には、ぼくはほとんど知識の持ち合わせがなかったのです。ただひとつ印象的だったのは、戦後間もなくみた黒澤明監督の映画「虎の尾を踏む男達」の中の、大河内伝次郎の武蔵坊弁慶ぐらいのものでした。
だから、構想をたてる段階で、まったくこまってしまいました。彼の人生については、まったく架空の話をでっちあげるほかにないのです。
後になって、これがかえってよかったことになりました。つまり、弁慶は、もともと架空の人物だったらしいということがわかってきたのです。架空の人物なら、どんなに自由に料理したって、よいわけです。
そして、そのとおり、ぼくはこの漫画で、むちゃくちゃに遊んでやりました。途中なんかはわるのりして、ふざけすぎた調子のところもあります。
だけど、たのしい仕事でした。かきおわったとき、やっぱり別冊ふろくのために、おなじ場所にカンヅメになっていた友人の福井英一さんが、「やりやがったな。うめえ。」とほめてくれました。
彼は負けずぎらいで、めったに人の作品をほめたことがないのです。それだけに、ぼくはむしょうにうれしかったことを、今でもおぼえています。
(手塚治虫漫画全集「弁慶」より)

発表

発表日:1954年2月
出版:おもしろブック 集英社

あらすじ

源平の争乱が渦巻く平安末期。比叡山を追われた僧・弁慶は、京の五条大橋で刀狩りを繰り返し、千本目の太刀を求めていた。ある夜、最後の一本を狙って挑んだ相手は、若き牛若丸――後の源義経。華麗な剣術に敗れた弁慶は、その場で義経に忠義を誓い、家来となる。
それからの弁慶は、義経の片腕として源平合戦を駆け抜ける。一ノ谷の戦いでは「ひよどりごえの逆落とし」で奇襲を成功させ、壇ノ浦では平家を滅ぼす戦いに加わる。だが、兄・頼朝との確執により、義経は追われる身となり、弁慶とともに奥州へと逃れる。
物語のクライマックスは、歌舞伎の名場面「勧進帳」を大胆にアレンジした関所越え。弁慶は義経を守るため、嘘を押し通し、関所の役人を欺く。最後は、敵に囲まれた義経を守る盾となり、矢を受けながらも立ったまま絶命する――「弁慶の立ち往生」である。

副題

  • 「プロロオグ」
  • 「べんけいがな、ぎなたをもってさ」
  • 「ちょうちんとつりがねはどっちがおもいか」
  • 「ひよどりごえ」
  • 「世の中のつめたさ ともだちのありがたさ」
  • 「船べんけい」
  • 「ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた」
  • 「かんじん帳(上)」
  • 「かんじん帳(下)」
  • 「べんけいの立往生」

収録されてる出版物

タイトル出版社発行年ページ数判型
手塚治虫文庫全集 弁慶講談社2011年3月11日367ページ文庫

登場キャラクター