雑巾と宝石


引用:手塚治虫文庫全集 ひょうたん駒子 講談社[雑巾と宝石]

中編漫画作品で、美醜の価値観を風刺的に描いたコメディです。

タイトルを考えた時は、たしか「ボロと宝石」だったのです。同名の外国の小説にあやかったのです。ところが〝ボロ〟という文字をどうしても漢字で書きたくて「襤褸」としたら、編集者に今どきそんな文字を読める人間はいないといわれ、仕方なく〝雑巾〟と書いてボロと読ませたのです。
ところが、またもや編集者に、雑巾をボロとは読まん、雑巾のまちがいだと思われるといわれ、えいくそとばかり〝ゾーキン〟に変えてしまいました。
だから、連載の毎月のタイトルは〝雑巾〟となっています。〝象野きん子〟というヒロインもその直後に変えたので、もとは須形ボロ子とつけられていたのです。

さて、これはぼくのはじめてのヤングもので、「ひょうたん駒子」は、この連載が好評だったために、「雑巾——」の掲載紙の「小説サロン」の先輩格にあたる「平凡」から依頼があったくらい人気は上々でした。そういったヤング誌には、いわゆるストーリー漫画がなかったのですね。だからいうなればこの作品はヤング向けコミックの元祖です。
(手塚治虫漫画全集「雑巾と宝石」より)

発表

発表日:1957年1月 – 1957年12月
出版:小説サロン 講談社

あらすじ

映画スターの宝石之(たからいしゆき)と、地味な雑誌社の事務員・象野キン子(ぞうのきんこ)は、ある交通事故をきっかけに奇妙な体質を得てしまう。なんと、車にぶつかるたびに容姿が入れ替わるようになってしまったのだ。
それまで美男子としてもてはやされていた宝石之は、事故後に醜男となり、周囲から冷たく扱われる。一方、地味で不美人だったキン子は絶世の美女となり、男性たちの注目を一身に集めるようになる。
容姿の変化によって周囲の態度が激変する中、宝石之の恋人やキン子の憧れの男性・土雷栗仁(どらいくりにんぐ)も巻き込まれ、美しさとは何か、愛とは何かをめぐるドタバタ劇が展開されていく。
見た目に振り回される人々の姿を通して、「本当に大切なのは外見より中身だ」と、軽やかに問いかけてくる物語。

収録されてる出版物

タイトル出版社発行年ページ数判型
手塚治虫文庫全集 ひょうたん駒子講談社2011年6月10日512ページ文庫

登場キャラクター