
変身能力を持つ謎の女性と落ちぶれた映画監督が織りなす、風刺と幻想に満ちたオムニバス形式の短編連作です。
パロディネタも随所にみられます。
フラレルノ大統領とマヤコ夫人…スカルノ大統領とデヴィ夫人
「こわーいぞう イッヒッヒ」…水虫治療薬のCMソング
中核派…全学連
ソンミ村虐殺事件…ベトナム戦争
「あなた好みの女」…奥村チヨの歌「恋の奴隷」
「汚職の汚という字は 汗という字ににてるわ」…アン真理子の歌「悲しみは駆け足でやってくるわ」
関係ない人やキャラがいくつも登場する。
…福島正美、大伴昌司、真鍋博、岸田純之助、岡本太郎、水木しげる、ギャートルズの母ちゃん
本作のタイトルについて手塚治虫は次のように述べている。
『I.L』というタイトルは、ほんとうは『I’L』つまり『I Will』の意味で、風変りなタイトルだと自認していたのですが、コンマが雑誌の予告で点に変わり、意味のない文字になってしまったのです。そこで思い切ってヒロインの名前にしてしまいました。
(「手塚治虫漫画全集『I.L』」より)
発表
発表日:1969年8月10日 – 1970年3月25日
出版:ビッグコミック 小学館
あらすじ
かつては一流と称された映画監督・伊万里大作は、映画界に絶望し、やけくそで支離滅裂な作品を撮って業界を去った。
ある日、街角の占い師に導かれて訪れた洋館で、彼はアルカード伯爵と名乗る男から、ある女性を託される。
その名はI.L(アイエル)。彼女は棺に入ることで、老若男女どんな人物にも変身できる不思議な存在だった。
大作はI.Lの能力を活かし、依頼人の望みに応じて“身代わり”を演じさせる仕事を始める。
I.Lは時に恋人、時に家族、時に他人になりきり、依頼人の人生に深く入り込んでいく。
だが、演じるうちにI.L自身の心も揺れ動き、演技と現実の境界が曖昧になっていく。
各話では、欲望・虚構・自己喪失・社会の欺瞞といったテーマが描かれ、I.Lと大作の関係も少しずつ変化していく。
やがてI.Lは、自分が“誰かの理想”を演じ続けることに疑問を抱き始める。
副題
- 第1話「箱の女」
- 第2話「フラレルノ大統領の宝」
- 第3話「蛾」
- 第4話「メッセンジャー」
- 第5話「ブロッケンの妖怪」
- 第6話「身代金」
- 第7話「フーテン芳子の物語」
- 第8話「マネキン」
- 第9話「栄光の掟」
- 第10話「封」
- 第11話「南から来た男」
- 第12話「ラスプーチン」
- 第13話「眼」
- 第14話「ハイエナたち その(1)」
- 第15話「ハイエナたち その(2)」
- 第16話「ハイエナたち その(3)」
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| I.L | 復刊ドットコム | 2019年2月27日 | 348ページ | B5 |