
愛を知らずに育った少年が「愛の試練」を受けながら、時代と世界を超えて愛を探し続けるSF青春悲劇です。
手塚治虫が描いた「三大性教育漫画」のひとつとして知られています。当時の日本では、性を扱うこと自体が社会的にタブー視されており、特に少年誌で性愛や死、運命といった重いテーマを描くことは極めて挑戦的な試みでした。そのため、『アポロの歌』は発表当時から問題作として扱われ、神奈川県では「有害図書」に指定されるなど、社会的な議論を巻き起こしました。
海外で翻訳出版されており、2008年に米国のコミックス業界の関係者が先行するアイズナー賞にて、ベスト企画賞にノミネートされた。
トーベ・ヤンソンのムーミンが登場します。
女神象がTV『ふしぎなメルモ』の天国の場面に登場します。
わたしの性教育漫画とは…
近頃、子ども漫画がハレンチになって、いかがわしい物語がずいぶん増えてきたという読者の声がきかれます。
そういう見方からすれば、この作品は確かに度がすぎて、いやらしい漫画の仲間に入るかもしれません。
僕は去年(昭和45年)、いわゆる性教育漫画をふたつ書きました。そのひとつがこれですが、この本のテーマはどちらかと言うと、愛のいくつかのケースについて、それが人間の生き方とどうかかわりがあるかを描きたいと思いました。それが成功したかどうかは別として、内容にはかなりどぎつい言葉やシーンが出てきたことは確かです。
いわゆる手塚流の漫画からは、かなりはみ出したものかもしれません。それが僕にとってプラスかマイナスかは、読者のご判断におまかせしたいと思います。
(手塚治虫がCOM別冊「アポロの歌」上巻によせたことば)
発表
発表日:1970年4月26日 – 1970年11月22日
出版:週刊少年キング 少年画報社
あらすじ
主人公・近石昭吾は、母親からの虐待と性的トラウマによって、愛という概念を憎むようになった少年。動物の愛情表現すら嫌悪し、殺してしまうほど心が歪んでいた彼は、精神病院に送られ、電気療法を受ける。
そのショックで彼は夢の世界へと入り、愛の女神から「愛を呪った罰」として、何度生まれ変わっても愛する人と結ばれる前に死ぬという宿命を課される。
以降、昭吾はさまざまな時代・世界で転生し、愛を知りかけては悲劇的な別れを繰り返す。
・ナチス支配下のヨーロッパでは、レジスタンスの少女と命がけの逃避行。
・無人島で動物たちと暮らす世界では、助け合いの中で愛を学ぶ。
・2030年の未来世界では、クローン人間が支配する社会で、愛を知らない女王シグマに「愛とは何か」を突きつけられる。
現実と夢、過去と未来を行き来しながら、昭吾は「愛とは何か」「人はなぜ愛し、苦しむのか」を問い続ける。
副題
- 序章「神々の結合」
- 第一章「デイ・ブルーメン・ウント・ダス・ライヘ(花と死体)」
- 第二章「人間番外地」
- 第三章「コーチ」
- 第四章「女王シグマ」
- 第五章「ふたりだけの丘」
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| 手塚治虫名作集15 アポロの歌1 | 集英社 | 1995年9月19日 | 293ページ | 文庫 |
| 手塚治虫名作集16 アポロの歌2 | 集英社 | 1995年9月19日 | 313ページ | 文庫 |
| アポロの歌 | 立東舎 | 2019年4月19日 | 608ページ | B5 |