
『ザムザ復活』は、未来のケニアを舞台に“人間を動物に変える”という狂気の制度と、それに巻き込まれた男ザムザの変身と復讐を描いた異色短編です。
ある朝 グレゴール・ザムザが 夢からふと覚めてみると 自分の姿が 一ぴきの大きな虫に かわってしまっているのに気が付いた
かたい甲らを下に あおむけになって まるくふくらんだ茶色の節だらけの腹が見えた
(カフカ作「変身」より)
発表
発表日:1976年5月号
出版:月刊少年マガジン 講談社
あらすじ
舞台は20XX年のケニア自然保護区。そこに暮らす野生動物たちの正体は、実は人間社会の不適合者たち。彼らは脳を削られ、ライオンやゾウなどの動物に強制的に変身(メタモルフォーゼ)させられていた。
主人公のザムザはこの施設の監視員。彼はライオンに変えられた元人間の少女エレーナに同情し、彼女と心を通わせる。しかしその行為が「人間失格」とみなされ、ザムザ自身もイモムシに改造されてしまう。
イモムシとしてゴミ処理場で生きるザムザは、本来なら数ヶ月で死ぬはずだったが、記憶を取り戻し、異常な進化を遂げて巨大な怪虫へと変貌。そして、かつて自分を虫にした所長に復讐を果たす。
作品の特徴
- カフカ『変身』へのオマージュ(主人公名「ザムザ」はそのまま)
- 手塚治虫の「変身」テーマを極限まで突き詰めた作品
- 倫理・人権・アイデンティティを問う深いテーマ
- グロテスクかつ哲学的な描写が多く、手塚の異色短編の中でも特に濃厚
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| 手塚治虫文庫全集 メタモルフォーゼ | 講談社 | 2011年7月12日 | 384ページ | 文庫 |