
青年向けのピカレスク漫画で、善悪の境界を揺るがす衝撃作です。
国名こそ具体的に示されないが、日本に駐留している某大国。「中田英覚」「英魂会」など、モデルを容易に創造し得る組織や個人が登場する。
某大国…アメリカ
中田英覚…田中角栄
英魂会…英霊にこたえる会
現行の期限遅れで背景の入ってない現行を担当が持っていったため、背景が真っ白のコマのまま印刷された。これを見た手塚治虫は悔しくて泣いてしまった。
従来の手塚カラーを打ち破り、あっけにとられるようなピカレスクドラマを書いてみたいと思って、この物語の構想を立てた。/ありとあらゆる社会悪——暴力、裏切り、強姦、獣欲、付和雷同、無為無策……、とりわけ政治悪を最高の悪徳として描いてみたかった。
(『ビッブコミックス』より)
発表
発表日:1976年9月10日 – 1978年1月25日
出版:ビッグコミック 小学館
あらすじ
物語は、銀行員・結城美知夫と神父・賀来巌の関係から始まる。結城は表向きは真面目なエリートだが、裏では誘拐・殺人などの凶悪犯罪を繰り返す冷血な男。彼は犯行のたびに賀来の元へ懺悔に訪れるが、二人はかつて肉体関係を持った同性愛者同士でもある。
15年前、南西諸島の沖ノ真船島で、米軍の秘密兵器「MW(ムウ)」が漏洩し、島民が全滅する事件が起きた。結城と賀来は偶然その場に居合わせ、事件を目撃するが、政府はこれを隠蔽。MWの毒にさらされた結城は脳に障害を負い、感情や倫理観を失った殺人鬼へと変貌する。
結城は事件の真相を暴き、MWの保管場所を突き止める。そして自らの死期が近いことを悟ると、MWを使って世界を道連れにしようとする。賀来は彼を止めようとするが、結城への愛と罪悪感に揺れ、ついには彼の犯行に加担してしまう。
物語は、結城の復讐と破滅への道を描きながら、人間の原罪、倫理、愛、そして国家の闇を鋭くえぐっていく。
副題
- 第1話「(無題)」
- 第2話「確証」
- 第3話「続・確証」
- 第4話「トライアングル」
- 第5話「続・トライアングル」
- 第6話「悪魔の化身」
- 第7話「虎口に入(い)る」
- 第8話「栄光の夜」
- 第9話「殺しのプレリュード」
- 第10話「疑惑の穽(あな)」
- 第11話「第3の証人」
- 第12話「廃墟」
- 第13話「島の果て」
- 第14話「再開」
- 第15話「協力者」
- 第16話「邂逅」
- 第17話「標的(ターゲット)」
- 第18話「封じ込め」
- 第19話「アラベスク」
- 第20話「倒錯」
- 第21話「番外編 スティング2」
- 第22話「証拠写真」
- 第23話「マリオネット」
- 第24話「R-基地に悪魔が来た」
- 第25話「死神の関門」
- 第26話「人質」
- 第27話「死滅への出発(たびだち)」
- 第28話「最後の賭(かけ)」
- 最終回「霧の中」
※第21話「番外編 スティング2」はオリジナル版のみの収録。
この回では手塚治虫自身が登場し、狂言回しとして物語に介入。結城美知夫が集めた莫大な資金の使い道について、作り話を交えながら読者に語るという構成になっている。
収録されてる出版物
| タイトル | 出版社 | 発行年 | ページ数 | 判型 |
|---|---|---|---|---|
| MW 1 | 復刊ドットコム | 2018年7月30日 | 300ページ | B5 |
| MW 2 | 復刊ドットコム | 2018年7月30日 | 300ページ | B5 |