
助けた鶴が娘となって恩返しに来るが、人間の欲と弱さがその奇跡を壊してしまう──民話的ファンタジーの悲しい結末。
発表
発表日:1956年2月 – 1956年4月
出版:少女クラブ 講談社
あらすじ
山々を越え、川を渡った先に、広大な領地を持つ だんぶり長者 の屋敷があった。
四里四方の田畑、女中や下男は二百人──村一番の勢力を誇る大地主である。
その屋敷に仕える青年 与ヒョウ は、年老いた祖母と慎ましく暮らしていた。
しかし長者から「小作料を払わぬ者は屋敷へ来るな」と言われ、途方に暮れてしまう。
友人に相談すると、
「うわばみ山で困っている旅人を助ければ、お礼がもらえる」
と聞き、与ヒョウは山へ向かう。
だが旅人は現れない。
代わりに、傷ついた 一羽の鶴 が降りてきた。
与ヒョウはその鶴を助け、帰る。
その夜、雪の中を越えて おつう という娘が与ヒョウの家を訪れ、
「一晩泊めてほしい」と頼む。
おつうは礼として 織物を織って与ヒョウに渡す と言うが、
「織っている姿は決して覗いてはいけない」
と念を押した。
おつうが織った布は、鶴の羽が千枚も縫い込まれた美しい織物だった。
長者はそれをブローカーに売った。。
おつうは美しく、長者の息子は「花嫁になれ」と迫る。
与ヒョウは必死に守るが、それが長者の怒りを買う。
長者は
「おつうを差し出さぬなら、ヒューヒュー・ドンドン・そてかぶる・エイヤ・ハッチャ・いやたまらん──というものを持ってこい」
と無茶な要求を突きつける。
困った与ヒョウは友人に相談し、
「ハチの巣を取ってこい」と言われる。
与ヒョウはハチの巣を屋敷へ持ち込み、
ドンドン叩いてヒューヒュー音を出し、
エイヤと投げつけると、ハチが飛び出してハッチャ、いやたまらんと大騒ぎになる。
これがきっかけで与ヒョウは「もう村を離れたい」と思い始める。
そこへブローカーが現れ、
「おつうに千羽織をもう一度織らせてくれれば、小判を山ほど渡す」
と持ちかける。
与ヒョウは
“お金さえあれば、すべてが解決する”
と考え、おつうに織物を頼み込む。
おつうは
「これが最後です」
と、自分の身体を削るようにして織り始める。
与ヒョウは禁を破り、織っている姿を覗いてしまう。
そこには──
一羽の鶴が、自分の羽を抜きながら織物を作っている姿 があった。
おつうは織物を与え、
「もうここにはいられません」
と言い残して去っていく。
与ヒョウは織物を抱きしめ、
泣き崩れるしかなかった。
収録されてる出版物
登場キャラクター
【資料】
・手塚治虫文庫全集 あらしの妖精 講談社